「健康な歯を守る治療」で歯科医療の常識を変える。
株式会社amidex
代表取締役 CEO 伊原 晃
名古屋大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻修了後、2007年に環境系ベンチャー企業である株式会社リサイクルワン(現:株式会社レノバ)に新卒入社。その後、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社を経て、2017年に株式会社地域経済活性化支援機構に転職し、福井県において地域活性化プロジェクトに従事。2022年より、徳島大学における産学連携ファンドの運営メンバーとしてスタートアップ企業の支援に携わる。その後、新たな歯科治療技術を開発する株式会社amidexの「より多くの患者さんが自分の歯で一生涯にわたり健康に過ごせる、感動溢れる世界を創る」というミッションに共感し、経営チームに参画。2024年7月、同社代表取締役 CEOに就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
健康な歯を最大限に守る、革新的な歯科治療。
私たち株式会社amidexは、「健康な歯を削らない治療」という従来の歯科医療における「当たり前」を変える挑戦を日々続けています。
これまで、歯が一本抜けたり、折れたり、すり減ったりといった形態修正を伴う歯科治療の際に、現在主流のセラミック治療は健康な歯まで大きく削ることが一般的でした。
例えば、歯が一本抜けた際にセラミックブリッジを装着するには、必要な厚みを確保するために両隣の歯を削る必要があり、これは患者さんにとって「できるだけ削りたくない」という本音とはかけ離れたものでした。
しかし私たちは、この「誰もが望んでいたけれど叶わなかった未来」に、技術の力で踏み込み始めています。
私たちが開発・提供しているのは、健康な歯を削らず、噛む機能と自然な美しさを再建するという全く新しい治療技術であり、これを支えているのが私たちのコア技術である「クリアインデックス」です。
技術の要となるオーダーメイド型枠「クリアインデックス」。
クリアインデックスは、歯の修復用の透明な型枠です。これは、患者さん一人ひとりの歯の3Dデータをもとに精密に設計され、3Dプリンターなどで作成されるオーダーメイドのパーツになります。
このクリアインデックスはマウスピースのように患者さんの歯にぴったりとフィットし、歯を補いたい部分だけ隙間が空いた状態になります。歯科医師は、この隙間にコンポジットレジン(セラミックス粒子を高含有する樹脂混合物、以下:CR)を流し込み、光を当てて硬化させます。
これにより、これまで歯科医師の高度な手作業に依存し、術者ごとに仕上がりの差が出やすかった複雑な形態修復が短時間かつ高精度で実現できるようになりました。
近年、CRの物理的特性が大幅に向上したおかげで、虫歯を削った後の小さな穴を充填するだけでなく、歯の欠損、破折、損耗に加え、審美的な回復のための形態修復について、健康な歯質を削らずに治療できるようになりました。
ただ、手作業のみでCRを用いて大きな形態修復を実現しようとすると、設計図がないまま、狭い口腔内にて手で少しずつ盛り付けて形を整える必要があり、熟練した歯科医師でも1~2時間かかりました。結果として全国で1%程度の限られた歯科医院しか取り組めておらず、セラミック治療が主流のままとなっていたのです。
クリアインデックス技術は、このプロセスをデジタル化・標準化し、誰でも安定した高い精度で短時間に治療を行えるようになるため、結果として「健康な歯を削らない治療」を普及できるようになります。
クリアインデックスは単なる型枠ではなく、CADソフトを用いて0.01mm単位で精緻に設計され、透明度が高くフレキシブルなシリコンもしくはレジン素材で精密に製作されます。そして、徳島大学や当社が開発した特許出願技術である2層構造のインデックスにより、設計通りの形態を口腔内に正確に再現することが可能になります。
当社は製造工程にもノウハウを蓄積しており、例えば洗浄だけでも7段階のプロセスを構築し、インデックスとCRが付着しにくいようにする工夫などが随所に施されています。
既成概念を打ち破り、歯に悩みを抱える方の人生を好転させる。
歯科業界では、材料や機器の進化などさまざまな改善が積み重ねられてきましたが、「削って被せる」という基本的な治療の考え方は長く変わりませんでした。私たちは、この長年の前提そのものに対して、真正面から問いを投げかけたいと考えています。
私たちの技術による治療は、単に見た目を良くするだけでなく、患者さんが食事や会話、笑顔を自然に楽しめるようにするための手段となります。
例えば、前歯のすき間に長年悩んでいた患者さんが、私たちの技術で治療を受けた結果、笑顔に自信を持てるようになり、憧れていた職場に就職できたという素晴らしいお話があります。
また、「奥歯で久しぶりにポテトチップスが食べられて泣きそうになった」という方もいらっしゃいました。しっかり噛めること、不自由なく話し、笑えることは人生の幸せの土台にあると私たちは考えています。
その実現のために、健康な歯を犠牲にすることなく回復させる。それが、私たちの技術の特徴です。患者さんにとって「歯を守る治療」の潜在的なニーズは非常に高いと実感しており、既に多くの問い合わせが寄せられています。
こうした社会的インパクトと技術の革新性が評価され、2025年2月には「ICC FUKUOKA 2025 デザイン&イノベーションアワード」で準グランプリをいただきました。
これは、歯科業界の外からも私たちの技術が「次の当たり前」になり得ると感じていただけた証で、大きな励みになっています。
私たちが挑んでいるのは単なる医療技術の改善ではなく、「治療とはこういうものだ」と思い込まれてきた歯科医療の常識そのものを覆すことなのです。
必要としているのは、amidexの未来を加速させる「推進力」。
amidexは全体で20名程度の小さなチームです。徳島の自社ラボでは、数名の技術・製造チームが一つひとつのインデックスを精密に作り上げており、マーケティング・カスタマーサクセスチームは業務委託メンバーを中心に全国の歯科医院への導入支援や活用促進を担っています。
導入先は増え続け、国内外からの期待も高まり、私たちはまさに次のステージに進む準備をしています。これから挑戦したいのは、発注率を高める導入サポート、より多くの歯科医院に私たちの技術を届けるBtoBマーケティング、患者さんに「健康な歯を削らずに済む」時代が来たことを広く伝える普及啓発活動、そして海外展開。どれもワクワクするテーマばかりですが、同時に大きな挑戦でもあります。
現在、私は経営全般や資金調達に加え、こうした新しい挑戦のすべてをリードしています。しかし、一人で抱えるには限界があり、新たなプロジェクトや海外展開に時間を割けば、どうしても他の領域にしわ寄せが生まれてしまう。そんなもどかしさを抱えています。
だからこそ必要なのは、マーケティングや新規事業立ち上げを中心に現場オペレーションから事業全体の推進までを担い、組織を内側から強く、そして外に向けて大きく羽ばたかせてくれる仲間です。
華やかな肩書や業界経験、専門性よりも、この技術が持つ可能性に心から共感し、「健康な歯を守る治療を当たり前にする」という未来を自分事として描ける泥臭さと誠実さ、そして熱意を持った方を求めています。
徳島から世界へ。そして、地域活性化のモデルケースへ。
徳島という、一見不利な地域から世界に挑戦することに、私たちは不安を感じていません。むしろ、この環境だからこそ、共感する仲間が増え、地元の大学や歯科医師、行政、関係機関など、多くの方々に応援していただいていると実感しています。
最近では、都市部に在住してフルリモートで関わる仲間も増え、志ある方々が集まる場へと徐々に成長してきました。
私は徳島出身で、大学進学を機に県外へ出て、東京や他地域で活動してきました。その中で、故郷が少しずつ活力を失っていく現実を痛感し、地域活性化に貢献したいという想いが強まりました。
特にREVIC(地域経済活性化支援機構)での経験を通じ、地域が不活性化していく構造は確かに存在しますが、それを変えるには「中心となる人材が高い熱量で主体的に活動し、価値を生み、人を惹きつけていく」ことが不可欠だと学びました。
amidexは、徳島大学発の技術を基盤とするスタートアップです。地方大学発のスタートアップが世界を変える医療技術を実用化していく。その姿そのものが、地域から新しい価値を創出するモデルになると信じています。
私たちの挑戦は、一企業の成長にとどまらず、「地方からでも世界を変えられる」という証明になるはずです。
「健康な歯をできる限り削らずに守る」という選択肢を、世界中の誰にとっても当たり前にするために。この挑戦を、徳島から一緒に世界へ広げていきませんか。
あなたの経験と情熱を、amidexで存分に発揮し、未来を共につくりましょう。