企業TOPインタビュー

建機・水・ITから、スポーツ・農業まで。徳島に寄り添う「笑顔」溢れる企業。

喜多機械産業株式会社
代表取締役社長 喜多 真一

更新日:2025年9月10日

1989年、徳島生まれ。小学生の頃からサッカーを始める。大学の在学時、半年間のアメリカ留学を経験。帰国後に建設機械レンタルの株式会社レンタルのニッケンに就職。栃木県に配属され、営業職・フロント職に従事する。2013年、徳島にUターンし、喜多機械産業株式会社に入社。JICAに採択されたフィリピンにおける「未電化地域開発普及・実証事業」プロジェクトのメンバーとなる。その経験を踏まえ、「笑顔あふれ選ばれ続ける会社」という企業哲学を発信するようになる。帰国後、営業本部長、常務を歴任し、2021年に代表取締役社長に就任。数多くの新規事業を手がける一方で、社内教育制度KTLA開校、ダイバーシティのための環境整備などにも力を入れている。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

建設機械の販売・レンタル・修理を中心に幅広い事業を展開。

喜多機械産業の創業は1926(大正15)年。設立は1961(昭和36)年で、現在までつながる建設機械・器具の販売・レンタル・修理の事業をここからスタートさせました。

以後、地元の建設業界で着実に信頼を重ねながら、新たな分野にも積極的に取り組んでいます。

建設現場の仮事務所や店舗として利用するユニットハウスの製造・レンタル・販売を開始したのが1981年。2001年には太陽光発電システム事業にも参入します。

祖父の二代目社長・喜多美行には「喜多機械は建物や道路などの建設に関わり、生活の基盤を支えてきた。当たり前の暮らしを支える電気・水道といったインフラ全般にも携わりたい」という想いがありました。

昨今は工場や社屋の屋根にパネルを設置して自家消費する需要が増えています。汚水処理プラント・濁水処理システムといった水関係プラントへの参入も、同じ想いによるものです。

建設現場から出る大量の汚水を浄化しようとメーカーと共同して処理機器を開発。当社の設備はダイオキシンやセシウムといった人体に悪影響のある重金属を除去し、飲料水にまで浄化できます。

また、よくあるフィルター交換式ではなく、砂ろ過式を採用して自動洗浄で何度でも再利用できるため、廃棄物を出しません。

機械の修理・レンタルは、現在は土木建築にとどまらず、林業、農・畜産業、防災・安全保安といった分野に拡大し、資材や仮設用品など取扱品目も多彩になりました。

最近は、土木建築の積算用ソフトウェアや測量用の機器・ソフトなどを提供し、建設業界のIoT化に貢献しています。

スポーツ業界や農業事業にも参入。

2020年から新規事業として、プロアスリートにも愛用されている「BULL」ブランドのトレーニング機器の販売・レンタルを開始しました。

もともと私はスポーツが好きで、働きながらプロを目指す選手を社員として受け入れていました。ほかの社員同様に建設機器などの営業を任せていた時も成果を上げてくれていたものの、より彼らのポテンシャルを発揮できる領域はないかと考えていました。

そんな時に、縁あって「BULL」を展開する企業の社長から事業承継の提案を受けました。誰だって自分の興味ある分野や好きな領域を仕事にすれば、より真剣に取り組めるもの。彼らのポテンシャルを活かすには最適な事業領域だと考え、事業承継を進めてスポーツ領域への参入を決めました。

狙い通り、アスリート候補の社員たちは頑張ってくれており、年商15億円ほどの事業に育っています。

2024年からは新たに林業を開始し、現在は農業にも力を入れようと、徳島名産のスダチ栽培に取り組んでいます。

林業・農業機械のレンタルも始め、それぞれの現場で働く方々に「一番困っていることは何か」と尋ねたところ、「人手が足りないこと」が最も多く挙げられました。「だったら当社から人を出そう」と考えたのが林業・農業事業のきっかけでした。

7~8年前に農業機械レンタルをやると言った時、周囲から猛反対されました。「農家の繁忙期は重なるので、繁忙期には台数が必要になるけど、それ以外は全然ニーズがない。採算が合わない」と。確かにその通りです。

でも、農業をサポートしなければ、日本の食糧自給は難しくなるばかりです。農業従事者の平均年齢は上がる一方で、「今の機械が壊れたら辞める」という人がほとんどです。

そこで機械をレンタルできるなら続けてくれるかもしれないし、新規就労者を呼び込めるかもしれません。そんな縁で農業に関わり始め、収穫期には人も出してお手伝いしていると、社員が農業のノウハウを習得するようになりました。

だったら自分たちでイチからやってみるか、と始めたのがスダチ栽培です。毎年栽培面積を10反(約1ha)ずつ増やそうと目標を立て土地を探しています。

「笑顔あふれ選ばれ続ける会社」でありたい。

私が大事にしているのは、「笑顔あふれ選ばれ続ける会社」であることです。お客さまや取引先、そして地域のすべての人々を笑顔にする。それが私たちの役目です。

人々を笑顔にするには、まず私たち自身が笑顔でなければなりません。社員が笑顔であるためには、当社が社員から選ばれる存在でないといけません。その笑顔によって、当社はお客さまに、そして、地域に選ばれ続ける存在となり得るのです。

こう考えるに至った大きな要因は、喜多機械産業に入社してすぐに経験したフィリピンにおける「未電化地域開発普及・実証事業」です。

これはJICAのプロジェクトに採択され、私はプロジェクトメンバーの一員としてフィリピンに赴き、滝を使った水力発電および飲料用水処理システムの設置にあたりました。

非常に苦労も多かったのですが、フィリピンの人々と現場で一緒に汗を流せた日々は充実していました。電気が灯り、飲料水ができた時に見た現地の人々の笑顔は今も鮮明に覚えています。

その時に感じたのです。売上アップ・利益拡大も重要ですが、仕事の根本は「誰かに笑顔になって喜んでもらうことだ」と。フィリピンのプロジェクトを終え、営業本部長に就任した私は、「利益追求第一ではない、人々に喜ばれることをしよう」と発信するようになりました。

「お客さまの喜びを考えて提案して、その対価をもらう。それを積み重ねていけば、数字はついてくる。数字を追うのはやめよう」と考えたのです。

建設機械の販売・レンタルを行う当社がお客さまの機械を見て、「これはここが悪くなっている。修理するより新しいのに変えた方がいい」と言ったら、売上を1~2割アップさせることは容易です。

しかし、末永く地元でお客さまと一緒にやっていこうと思うと、そんな自己本位な営業は通用しません。「この部分を修理すれば10万円くらいで済み、あと3年は働いてくれますよ」という具合に、相手の立場になった正しい提案が、お客さまとの信頼関係を形成するのに欠かせないのです。

物事を短絡的ではなく、長期的に見よう。数字を追うのではなく、お客さまの笑顔を大事にしよう。そう呼びかけるようになってから、堅実に数字もついてきました。

お客さまに対し、笑顔で前向きな姿勢を忘れずにいると、良い提案ができるようになります。それがお客さまに受け入れられ、笑顔になってくれると達成感が得られ、もっとやっていきたい、と自然に思えるようになります。

そういう自発性を持った社員が多く存在する会社ほど、強いものはありません。

ダイバーシティなど職場環境の整備にも注力。

社員の笑顔を生み、社員から選ばれる会社であり続けるため、健康経営や働き方改革、ダイバーシティなど職場環境の整備にも力を入れています。

業務効率化を進めることで、時間外労働の削減に着手。数年前と比較して4割の削減を達成しました。また仕事の属人化を解消し、ノウハウ共有を進めています。

有給休暇はアプリで気兼ねなく申請できるようにしました。土日や長期休暇の前後にくっつける形で年休取得の奨励日を設定し、長く休んでもらえるよう努めています。

2022年には社内アカデミー「KTLA(KITAKIKAI LOCAL ACADEMY)」を開校。これは社員が講師となり、決算・簿記など経理の見方やExcel基礎、営業スタイル、顧客管理、支払回収といったそれぞれのノウハウを、キャリアの浅い他の社員に伝授してもらうものです。

これ以外にも、外部講師による講演やオンライン講座を提供しています。社員から「この部署に何日か行ってみたい」という希望があれば、「短期留学」してもらう社内留学制度も実施しています。

祖父の喜多美行は以前から、「仕事に性別は関係ない。大事なのは仕事ぶりだ」と言っていました。当社にはもともと多様な人材、柔軟な働き方を受け入れる風土があったのです。

ですから「管理職の何%を女性に」という指針がない時代から、男女関係なく仕事ができる人がその役職に就いてきました。女性管理職も当たり前のように増えています。

女性には様々なライフイベントがありますが、それがキャリア継続のハンデとならないよう工夫をしています。最近では、不妊治療に対応した就業規則も整備しました。

当事者だけが一人で抱え込まないよう、会社として相談に応じたり、通院時の配慮を行うなど、支援体制を整えています。

他にも介護などプライベートな問題を抱える社員はたくさんいますが、そのことを社員一人に背負わせたくありません。制度を整え、社員一人ひとりに寄り添っていきたいと考えています。

次の100年も、選ばれ続けるために。

2026年に創業100周年を迎える当社は、「みんなで売上100億円を目指そう」という目標を掲げています。しかし既に述べたとおり、当社は数字を追う会社ではありません。

大切なのはお客さまに選ばれ続けるサービスを展開し、次の100年に続く信頼関係を築くことです。そのためには現状に満足せず、新たな事業の柱を育てなければならないでしょう。

経営企画室を新設したのも、そのためです。今までは私がいろいろ行動していましたが、さすがに負担が大きくなってきました。そこで経営企画室のメンバーには、新規ビジネスのアイデア出しや、精査する役割を担ってもらっています。

新規事業に取り組む中で、今後は業務提携やM&Aが増える可能性もあります。その際、グループ入りした会社の経営を経営企画室のメンバーに任せられれば、より積極的にM&Aを進められるでしょう。

そうした実践的な経験を通じて、経営の一翼を担うスキルを身に付けてほしいという想いもあります。

そのほか、新規事業を推進していく中で、実際の事業現場をけん引するプロフェッショナル人材も幅広く募集していきたいと考えています。

これまでに触れてきたスポーツ、農業・林業に加え、海外事業など多様な領域で事業を展開しており、今後さらにその幅を広げていく予定です。転職を希望される方々のこれまでのキャリアを活かせるフィールドは、必ずあると考えています。

キャリア採用の場合、求めるスペックはそれぞれ異なります。しかしどの職種を募集する上でも大切なのは、「笑顔あふれ選ばれ続ける会社」という私たちの目指す姿勢に共感してもらえるかどうかです。

最後に、喜多機械産業は自然をベースとして、地域に貢献できる事業を展開していきたいと考えています。そして、チームワークを大事に、共に助け合いながら成長しようと考える人を迎え入れたいと思います。

売上や会社の規模を、いたずらに大きくしようとは考えていません。仕事の根本は「誰かに笑顔になって喜んでもらうこと」です。これからも笑顔で前向きな姿勢を忘れずに、徳島からチャレンジを続けていきます。

編集後記

コンサルタント
德永 文平

本業の成長はもちろん、新規事業の展開、SDGsやダイバーシティの観点からも注目を集める喜多機械産業株式会社の若き経営者、喜多真一社長にインタビューの機会をいただきました。

「選ばれ続ける会社」の実現に向けて目先の利益にとらわれず、顧客と関係を築いていく信念や従業員を笑顔にするためのさまざまな施策の裏に秘められた想いを伺い、今まで以上に同社の力になりたいと感じました。

2026年には創業100周年の節目を迎える同社が、今後どのような取り組みを進めていくか、引き続き注目していきたいと思います。

関連情報

喜多機械産業株式会社 求人情報

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る