企業TOPインタビュー

タクシー業界のDX化を推進し、徳島から地域交通の未来を創造。

株式会社電脳交通
代表取締役CEO 近藤 洋祐

更新日:2021年12月22日

徳島県出身。高校から野球を始め、メジャーリーガーを目指し18歳で単身アメリカへ。4年間挑戦するも、1軍定着はできず帰国。その後、祖父の経営するタクシー会社の経営危機に際して、家業を継ぐことを決意。2012年に吉野川タクシー(有)の代表取締役CEOに就任し、廃業寸前だった会社をITやマーケティングを取り入れることで再建。その経験を踏まえて、タクシー事業者が抱える課題を解決したいと考えて、株式会社電脳交通を2015年にCTOの坂東氏と共同創業。また徳島県タクシー協会の理事にも就任。地域交通領域の活性化をライフワークとして、日々活動している。

タクシー業界の抱える課題を事業者視点で解決

電脳交通は、地域ごとの移動ニーズに寄り添い、衰退する地域交通の課題を解決する会社です。地域交通の担い手であるタクシー業界をはじめとしたさまざまな事業者さまの、事業の成功・成長をサポートしています。

メイン事業はクラウド型配車システムの開発・提供で、タクシー業界に対するDX化推進を行っています。また、タクシー業界の独自の課題に対応するため、自社でコールセンター運営も行い、電話による配車業務なども受託しています。最近では、これらのソリューションをベースとした、共同配車構築サービスや地域交通ビジネス開発などにも取り組んでいます。
 
電脳交通の強みは、事業者視点を持った圧倒的な現場視点です。私は2009年に地元徳島へUターンし、祖父が経営する小さなタクシー会社「吉野川タクシー」へ入社しました。タクシー台数9台という小さな会社で、25年連続で売上高が減少しているような会社でした。そんななかで私は事業承継し、ITを積極的に取り入れて経営に取り組み、幸いにも経営再建を果たしました。また、多くのメディアに取り上げていただき、全国のタクシー会社から視察も相次ぎました。

そうしたなかで、このITサービスなどを全国のタクシー会社へ提供・活用できれば、同じ課題を抱える地域の交通機関の衰退に歯止めをかけられるかもしれない、との想いがあり、CTOの坂東とともに電脳交通を立ち上げました。電脳交通はIT企業のイメージが強いですが、事業者としての深いレベルでの課題理解があり、ソリューションを提供できることが強みだと考えています。
 
また、2021年10月から正式サービスとして「地域交通ソリューション事業」を開始しました。国内における地方の公共交通は撤退や縮小、交通空白地帯の拡大が進んでいます。こうした背景により、国内では交通課題の解決に向けたデマンド交通の取り組みや、観光・地域振興へのMaaS(Mobility as a Service)の取り組みが活発になっています。

電脳交通は、ドアtoドアの輸送が可能な公共交通であるタクシー事業者向けの配車システム提供を通じ、地域交通の維持・存続に取り組んでいます。2019年からは、全国の地方自治体・公共団体・民間企業と連携し、多くの実証実験を実施。必要なシステム提供と機能強化を進めてきました。

このたび、全国の自治体・公共団体向けにシステムの提供を開始し、日本全国で地域公共交通の課題解決を支援していきます。

徳島生まれのラベルは変わらない。

私自身が徳島生まれであり、徳島への想いは非常に強いです。もちろん、徳島生まれというラベルはこれからも変わりません(笑)。現在、アルバイトを含めて139名の従業員が所属する会社に成長しましたが、徳島で雇用を創出することを、個人の志として大切にしています。

徳島には、大塚製薬のような地域を背負っているといっても過言ではない企業があります。事業や雇用はもちろんですが、スポーツ・文化・観光など多角的に徳島に貢献している企業です。まだまだ電脳交通はその規模には至っていませんが、事業・雇用を拡大し、自分の生まれた故郷に貢献していきます。

今後ますます競争環境が厳しくなるなかで、生き残る企業は、新たな事業を展開する企業、商圏拡大できる企業、グローバル展開できる企業など、成長・挑戦できる企業に限られてくると思います。そうした挑戦を支える、頼もしい人材が集まる企業になり、徳島を代表する企業に成長していきます。
 
こうした想いは、電脳交通の創業前から持っていました。少子高齢化、人口減少、過疎化が他の地域に先んじて顕在化しつつある四国・徳島という課題先進エリアにおいて、みんなが現実を直視しない状況に危機感を持っていました。それは勝手ながら、故郷・徳島に対する危機感だったのかもしれません。

その危機を解消するために、徳島という小さなマーケットだけでなく、全国エリアで事業展開し、事業成長することで地元・徳島に貢献しようと考えていました。実は、それを実現するために、「インターネットで第二創業する」と、吉野川タクシーの再建をするときから決めていました。既存の業界だと財力のある企業が勝つ確率が高いので、弱者の戦略として、勝負を仕掛けるならばインターネットだと考えていました。

パブリックカンパニーとしての成長へ

私は高校から硬式野球を初めて、高校卒業後はメジャーリーガーを目指してアメリカへ渡りました。普通に考えれば、高校から野球を始めた人はメジャーリーガーを目指さないですよね。ただ、野球の知識が無いがゆえにチャレンジできたんだと思います。

それは吉野川タクシーを継承する時も一緒で、固定観念にとらわれなかったのでチャレンジできたんだと思います。当時の吉野川タクシーの財務状況をちゃんと理解していれば、事業承継していなかったかもしれません(笑)。

これは創業当初からの考えですが、私は電脳交通を近藤カンパニーではなく、パブリックカンパニーとして成長させていこうと決めていました。

私自身、これまでの人生で「環境」で人格形成し、運命が変わりました。しっかりと成長を続けて、パブリックカンパニーになることが、これまで私と関わってくださった方に対しての恩返しだと思っています。電脳交通は、近藤個人のための会社ではなく、業界や日本にとっての公器でありたい続けたいと思っています。

また、電脳交通の事業は、地域交通というインフラを創る仕事です。タクシー業界・交通業界は勿論ですが、財閥企業や大手企業、自治体など多くの皆さんから応援してほしいと思っています。

そうした想いもあり、直近では2020年10月に5億円の資金調達を実施しました。引受先は、三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイ、阿波銀行、いよぎんキャピタルです。また、資本業務提携を締結した各社とは、日々暮らす生活者、訪れる観光客、そしてすべてのタクシーに関わって働く人々へ、タクシーのDXを推進するさまざまな取り組みを開始しています。

人流を基点とした街づくり

現在タクシー業界のDX推進を中心に取り組んでいますが、今後は街づくりの領域にもチャレンジしていきたいと考えています。街づくりといっても、ビルやマンションを建てるわけではありません。「人流」という観点で、街をプログラムするというイメージの方が近いかもしれません。

タクシーは、ドアtoドアの輸送が可能な公共交通です。高齢化が進めば進むほど、ドアtoドアのニーズが増加していきます。そうしたニーズを捉えて、タクシー業界の中だけでなく、それ以外の業界も含めて、人流データを活用した街づくりに関わっていきたいと思います。

また、これまで以上にタクシー事業者の業務効率化を支援していくことはもちろんですが、より一層集客につながる挑戦も進めて行きたいと思います。公共交通をとりまくすべてのDXを自社で取り組むのではなく、我々がハブとなり、必要なサービスや企業を繋いでいく役割を担っていきたいと思います。

そして、より多くのタクシー事業者さまに当社のサービスを導入いただき、我々がインフラとして定着して、新たな価値を創造していけるようになりたいと思います。
 
こうした取り組みを進めて行く↑で大切なことは、関係者との調整力だと考えています。業界・業種関係なく、真摯に顧客に向き合い、双方の利害を理解して、調整できるが重要です。

また、「情理」が分かる人かどうかが大切です。今は事業を創るフェーズなので、新たな取組みや、再現性が無い仕事も多いです。ただ、とにかく結果を出すことにコミットして、やれる方法を考え続けて、行動できる人と一緒に仕事をしていきたいと思います。

地域交通の未来を共に創造する仲間を求めています。

採用に関しては、徳島本社はもちろんですが、東京拠点など他エリアについても募集しています。個人的にも、電脳交通の事業には、いろいろな人に関わって欲しいと思っています。

これまではスタートアップということもあり、「一緒にやろう!」という気持ちだけで走ってきました。しかし、今は事業も成長してきて、人事評価制度を構築したり、ミッション・ビジョン・バリューを制定したりと、少しずつ会社らしい会社になってきました。
 
ただ、ベンチャーでの仕事は仕事内容や組織体が変わることも多く、苦労することも多いと思います。一方で、ベンチャーのスピード感という面では、挑戦したいと思っている人にとっては最良の環境だと思います。

また、組織の成長に伴い、組織が求めるものも変化していきます。創業期はゼネラリストが多かったですが、現在は少しだけ組織化・分業化されてきたので、専門性が以前よりも求められるようになってきています。

そうした変化の中で、残念ながら退職していったメンバーもいます。ただ、本当は退職してほしくなかったという想いがあるからこそ、組織を良くするために制度・仕組みなども整えてきました。

私自身がこれまでの人生で関わってきた人たちから受けた影響は、計り知れません。今度は自分自身がそうした影響をメンバーに与えられるように、これからも挑戦を続けていきたいと思います。

編集後記

チーフコンサルタント
吉津 雅之

今回のインタビューでは、近藤社長の徳島に対する想いや事業に対するエネルギーの強さが非常に印象的でした。四国を代表するベンチャー企業として注目される企業ですが、「なぜタクシー業界なのか」「なぜ徳島で事業をするのか」という本質的な想いをお聞きして、とても感銘を受けました。

また、「圧倒的な現場視点」が強みの電脳交通だからこそ、パブリックカンパニーとしての成長を志向し、多くの事業者を巻き込むことで未来を創造していると実感しました。四国・徳島から挑戦を続ける電脳交通、今後のさらなる成長が楽しみです。

関連情報

株式会社電脳交通 求人情報

株式会社電脳交通 転職成功者インタビュー

企業TOPインタビュー一覧

ページトップへ戻る